これなら参加したい!行きたくない社員旅行を大改革
社員旅行は気が重いもの?
社内の一大イベントとして社員旅行を企画しても、参加率が思うように伸びず、担当者や幹事役、事業主が頭を悩ませているケースは少なくありません。親睦を深めるためにも参加した方がよいことは分かっているけれど、そもそも団体旅行に苦手意識があり、何とか欠席理由をつけたいと考える人もあります。
日本労働組合総連合会が2012年に実施した、20~50代の全国男女1,000人を対象とした調査では、社員旅行に「参加したい」とした人は約44.3%にとどまり、2人に1人は参加したくない、できれば行きたくないと考えていることも明らかになりました。
過半が行きたくない思いを抱えているのに、半ば強要的に参加することが義務といった雰囲気から社員旅行を強行しても、プラスの効果は期待できません。せっかく費用をかけて実施するのですから、誰もが思わず参加したくなるような魅力のある旅行、実施することでのちの業務にもよい影響がもたらされるイベントにしたいところです。
提案されるままのプランでかたちだけ整えたり、旧来のまま惰性で実施したりしていては、何も変わりません。全員の希望が100%叶うものは不可能でも、楽しめる社員旅行、魅力ある社員旅行へと変えていくことはできます。問題点を洗い出しながら、より実施意義のある社員旅行を企画するための工夫について、考えていきましょう。
なぜ行きたくない?理由を考える
社員がさまざまな世代、さまざまなバックグラウンドや考え方をもつ広がりのある人間集団である以上、少々工夫しても行きたくないと思う人が出るのは当然、全体のためには我慢して参加してもらわなければ、と思う方もあるでしょう。
しかし会社が参加を強要することは禁止されています。雇用契約で社員を拘束できるのは、あくまで業務に該当する労働時間に限られるのであって、業務時間外や休日に実施するものとなる社員旅行は参加するか否かは、本人の意思に拠るものとしなければなりません。
社内会議や研修を主内容としており、業務の一環として実施される旅行であれば、正当な理由がない限り、基本的に参加義務が生じますが、その場合は所定の残業代や休日出勤手当の支給対象となるのであって、福利厚生の社員旅行とはまったく性格の異なるものになるでしょう。
とはいえ好きに断れるとなると、先述の調査結果から考えても、参加率が下がるリスクは急速に高まります。最低でも半数を超える実参加者が確保できなければ、全員へ平等に与えることが原則となる福利厚生の考え方からして、社員旅行の費用を経費計上することが難しくなるなど、多くの問題が諸処に発生してしまいます。
そもそもの実施目的がコミュニケーションの円滑化やチームワークの強化にあるケースも多いでしょうから、参加率が低いことは、社員旅行の成功を遠ざける致命的要因になります。ではどうするか——社員の「行きたくない」を「行きたい」に変えるには、まずなぜ「行きたくない」のか理由を把握しなければなりません。その上で、理由に応じた工夫・改善を加えていくことが大切です。
若手を中心とした意識変化にも注意、楽しめる企画とは?
社員旅行へ参加したくない理由の第1には、休日が減る、プライベートな時間を使ってまで行きたくないという声があります。取引先との関係など、業務への支障を最小限に抑えたいと考える場合、もともとの休業日に社員旅行を計画するケースも多いでしょう。
しかし、ワークライフバランスが重視される現代、若手を中心に会社の都合が優先される、会社に家族のような強い帰属意識をもつといった考えは薄れ、はっきりオンオフを割り切るようになってきています。そこで、勤務日での実施を考えてみましょう。休日にかかる場合は振替休日の導入も検討します。
また実施日の希望をアンケートで回答してもらい、反映させていくのもよいですね。いずれの場合もできるだけ早めに計画・周知を行い、社員が無理なくスケジュールに組み込めるよう努力しましょう。
オンとオフを切り替えるタイプだからこそ、職場の同僚と旅行することに抵抗があるという人もあります。そうした社員はむしろまじめで仕事へのモチベーションが高いタイプですから、この雰囲気が強いなら、社員旅行をより研修要素の強いものに変えてみるとよいかもしれません。
この旅行はキャリアアップにつながるのだ、新たなアイデア創出につながる、チームワーク強化になるといった明確な目的が理解されると、かえって企画を楽しめる可能性があります。実践的なケースを想定したチームビルディングのゲームなど、レクリエーションを工夫し、いつもと違った環境で楽しみながら学べる機会として計画してみてください。
行き先に魅力がなく毎年同じで退屈だから、という理由も社員旅行を嫌う人に多くみられます。行き先は重要なポイントですから、旅行代理店の提案なども受けながら、全員の希望をとるなどして、行きたくなる旅行作りに努めましょう。
話題や人気を集めているアクティビティを取り入れ、体験型のプランを組むのもおすすめです。老若男女全員が体力的に無理なく楽しめることを確認しながら、ただ観光地をめぐるのではない、その土地へ足を運んでこそのアクティブなプランを立ててみましょう。前年の幹事役さんにも聞き取りを行い、実現できればよかったが実際にはできなかったこと、現地で聞かれた社員の声なども参考に、改良・刷新を図ってみてください。
縛りすぎない計画と個々への配慮も重要!
団体行動自体が苦手、旅行そのものは好きだけれど社員旅行は自由がないから嫌といった声もつきものです。こうした声には、適度な自由時間を設けた縛りすぎないスケジュールとすることで対応しましょう。
集合時間と場所を徹底しておけば、幹事の負担も低減させられるほか、柔軟性が生まれることでトラブルへの対応もしやすくなるなど、多くのメリットが期待できます。社員旅行だから全旅程を事細かに決めなければならないという思い込みは捨て、一時的にでも自由になれるフリータイムを隙間に設けましょう。
女性にお酌をさせるのが当然といった宴会や、仕事の人間関係の延長であることを過度に思わせるシーンなど、旧態依然とした雰囲気での旅行は、不満のもととなり、翌年以降の参加意欲をそぐものになってしまいます。そうした事態が生まれないよう、できれば社長をはじめトップにも相談し、無礼講で気軽に参加できる事前配慮も進めておきましょう。
食物アレルギーや苦手な食材があるという人もいるでしょうから、あらかじめアンケートで記入してもらったり、申し出てもらったりするなどして、無理なく楽しめる細やかな心配りも行います。こうした姿勢が伝わることで、行ってみようかなと思う人も増えてきます。
いかがでしょう。社員旅行に参加したくないと思われる理由から、改善策を探り、これまでの'枠'を超えたイベントとして企画を工夫することで、ぐっと魅力のあるものになることが感じられたのではないかと思います。
積極的な参加意識が生まれ、高い参加率と実施後の満足度を誇る充実した社内イベントとすることができれば、普段稀薄なコミュニケーションの深化・円滑化を図ることができたり、新たなビジネスアイデアの創出につなげられたりと、社員旅行は非常に有益な機会になります。ぜひ現状の課題に沿った社員旅行改革を実施し、楽しく有意義なイベントにしましょう。
(画像は写真素材 足成より)